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zoom RSS 「酵素 エンザイム」にからんだ健康情報08 番外 22年前の「酵素栄養学」の誕生した頃

<<   作成日時 : 2007/07/06 23:43   >>

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ハウエルの酵素栄養学が出版されたのは1985年です。
(科学万博つくば'85開催、電電公社や専売公社が民営化、「聖輝の結婚」のあった年です)
この酵素栄養学は現在から見ればもちろん骨董無形ですが、当時の生化学や分子生物学の知見からみてもかなり骨頭無形なものです。
当時の理解を無視して、現在の理解で古い説を攻撃するのは妥当ではありません。
そこで、原著が出版された1985年頃までの酵素学の理解を概観してみましょう。
ちなみに、翻訳本が出版されたのは1999年7月(アンゴルモアの大王が降るといわれた月)です。

1985年といえば、私は学生でした。
その年までにどんな教科書が日本語で読めたかというと、ボールドウィンの古典的名著「動的生化学」やコーン・スタンプ、レーニンジャー、ストライヤー、ハーパー、スタイナーといった名だたる生化学の教科書などがありました。
その中では、X線構造解析により明らかになったタンパク質の立体構造を基礎に、反応速度論が語られています。
日本語に訳された教科書であってもこの状態です。
まして、英語圏にいるハウエルがこれらの教科書を読めないはずがありません。

酵素化学の研究は1926年にまでさかのぼります。
Sumner がタチナタマメからウレアーゼという酵素の結晶化に成功しています。
さらに1930年から1936年頃にはNorthrop と Kunitz により、ペプシン、トリプシン、キモトリプシンといったタンパク質分解酵素の結晶化にも成功しています。
この結晶化により、酵素の本体はタンパク質であることが判明します。

原著が出版されるより前の1983年10月にFersht著(今堀和友、川島誠一訳)の「酵素 構造と反応機構」(東京化学同人)が出版されています。原著は1977年出版です。
この本は、題名の通り、酵素の構造と酵素反応機構の解説が中心で、序文には「X線結晶学で三次構造が解明された酵素に限られる」と述べているように、推測や憶測で語られていた反応機構をばっさり切り捨て、三次構造の判明している酵素の反応機構にのみ焦点を当てて解説されています。登場する酵素の種類は少ないですが、それでも、1977年までには相当数の酵素の構造と反応機構について語るだけの実験結果が得られていました。

酵素の名前は何を付けてもいいわけではなく、ちゃんと国際的に取り決めがあります。
実際には、国際生化学連合の酵素委員会というところで命名・分類されており、名前だけでなく系統的な番号も与えられています。
ハウエル本の出版された直前の1984年版の Enzyme Nomenclature によると、2,477種の酵素が命名され番号が与えられ、どんな反応を触媒するか分類されています。

Enzyme Nomenclature 1984: Recommendations of the Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry on the nomenclature and classification of enzyme-catalysed reactions. (Edwin C. Webb, Academic Press, 1984)

酵素実験法の定番、「Methods in Enzymology」(Academic Press)のVol. 1が出たのが1955年です。ハウエル本の出た1985年までの30年間で100巻を超える本が出版されています。


この時点で、アミノ酸配列のわかっているものも多数ありました。
1945年、サンガーによりタンパク質のアミノ酸配列の決定する方法が開発されました。この方法を応用することで、1956年にはインスリンの全化学構造が決定されています。ハウエル本の30年程前のことです。
サンガーは1958年にノーベル化学賞を受賞しています。
その後、続々とタンパク質の一次構造が決定されています。


分子生物学の立場から眺めると、1953年にワトソンとクリックにより、DNAの二重らせん構造のモデルが提唱され、クリックによりいわゆる分子生物学のセントラル・ドグマが提唱されたのが1958年です。
酵素を含むタンパク質のアミノ酸配列は、すべて遺伝子にコードされていることがわかりました。
その後、1960年代に入ると、ニーレンバーグによりコドンの解明が進み、1970年代には組換えDNA実験も行われるようになりました。
1975年には、アシロマ会議が開かれ、遺伝子組換え実験の規制にかんする議論が行われました。
ハウエル本の10年前のことです。

ワトソンの著名な教科書「遺伝子の分子生物学」の第3版が1976年に発行されています。
ちなみに、Albertsらの「細胞の分子生物学」の初版が1983年(翻訳本は1985年)に出ています。


Polymerase Chain Reaction 法(PCR法)という遺伝子のクローニング等の分野に革命をもたらした方法が考えられた頃でもあります。
ハウエル本出版から数年後には、日本に最初の自動PCR装置が上陸しています。


ハウエルの酵素栄養学が誕生した時代背景は、以上のような感じです。
ここからわかるように、酵素学は相当発達しており、タンパク質としての酵素の合成方法などはそうとう詳しく明らかにされつつある時代であることがわかります。

ハウエル酵素栄養学が誕生した当時、酵素の理解が遅れていたからこんな説が登場したわけではないことが、これらのことからわかると思います。



「酵素 エンザイム」にからんだ健康情報シリーズ
・01 概要と書籍
・02 酵素栄養学とは何か
・03 通説の分子生物学はどのように説明しているのか
・04 基幹となる酵素から一般の酵素の作られ方
・05 番外『長生きの決め手は「酵素」にあった』を読む
・06 番外「病気にならない生き方」などを読む1
・07 番外「病気にならない生き方」などを読む2
・08 番外 22年前の「酵素栄養学」の誕生した頃
・09 番外 32年前の「酵素健康法」
・10 番外 52年前の「酵素療法」

・ミラクル・エンザイム説とコラーゲン 美容と健康はこれでゲットだ
・世の中にはいろんな酵素があります
・食べたタンパク質はどうなるのか 経口摂取した機能性タンパク質の働き方


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