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zoom RSS 朝日新聞の記事などにみられる「安全」 ミートホープ詐欺事件より

<<   作成日時 : 2007/07/27 01:11   >>

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2007年6月に発覚したミートホープ社の牛肉コロッケ偽装詐欺事件を受けて、2007年7月23日付の朝日新聞などに、日本生活協同組合連合会(以下、生協)の謝罪広告が載りました。

 CO・OP牛肉コロッケの原料偽装について(第9報 7/23)
 〜本日、全国紙等のお詫びとお知らせを掲載〜


ミートホープ偽装詐欺事件における問題の生協のコロッケは「コープブランド」だっただけに、生協にとっては相当なショックだったんでしょう。
 #もっとも、生協は遺伝子組換え食品のチェックなど、あまり意味の
 #ない検査にずいぶんお金をかけているようですが。
 #生協が遺伝子組換え食品を嫌う理由が書いてあるサイトを見ると、
 #結構笑えます。

それはともかくとして、今回の事件をきっかけに、生協が改めて関連商品のDNA検査をしたところ、問題のコロッケ以外に挽肉を使った237のコープ商品に偽装はなかったらしい。

引き続き、「産地」や「品種」の偽装がないかを1197品目で遺伝子検査するらしい。
その意気込みは買いますが、本当にそんな検査ができるんでしょうか(以下のブログ参照)。

 牛ミンチ偽装事件をPCR法を用いたDNA鑑定法の観点から見てみましょう

これだけの品目で「産地」や「品種」を調べるとなると、これは結構時間がかかるでしょう。
まず、「産地」や「品種」が特定できるPCRプライマが必要になります。
あらかじめ用意してあればいいですが、商品に使用した肉の産地や品種がすべて特定できるPCRプライマを用意するとなると、これだけで結構時間がかかりそうな気がしますが。
本当にそんなPCRプライマを用意しているんでしょうか。
もしあるのなら、あとはPCRやるだけですから、今後も継続してDNA検査することが決まったらしいので、あとは楽でしょう。


でも、やっぱり気になります。
PCR検査を使って、「産地」をどうやって特定するんだろう?
なにか裏技があるんでしょうか?
PCR検査でわかるのはゲノムDNAやミトコンドリアDNAのDNA型がわかるだけです。
どこで育ったかとか、どのように肥育されたかとかはさっぱりわかりません。
生協で扱っている肉類は、産地ごとに異なる品種の家畜だけを使っているんでしょうか。
「産地」の偽装を見抜けるという自信はどこからくるのか、謎です。



朝日新聞の記事によると、東京本社版と大阪本社版では見出しが異なり、おもしろい。

東京本社版の記事
朝日新聞2007年7月21日付
時時刻刻 きょうがわかる
「生協、定期DNA検査 見逃し謝罪、防止策 ミートホープ偽装」

大阪本社版の記事
朝日新聞2007年7月21日付
時時刻刻 きょうがわかる
「食の安全 模索続く 偽装ひき肉1カ月 原料混入見落とし」

両方の記事で、書いてあることはほとんど同じです。
改行の位置が違うとか、1段落分多いとかその程度の違いがあるだけです。

しかし、見出しと写真に大きな違いがあります。
東京本社版の記事には「食の安全」の文字が全くありません。
コープブランドの説明に「安心・安全」の文字が見られますが、それ以外に「安全」の文字が丁寧に除いてあります。

一方、大阪本社版の記事では、見出しに大きく「食の安全」と書いてあります。
せっかく記事本文から「安全」の文字を除いて、「安全」にかんする内容も丁寧にのぞいているのに、この見出しだけで記事全体が台無しです。
一番目立つところに「食の安全」と書いてあるので、大阪本社にとってはこの記事は「食の安全」にかんする記事と認識しているらしい。

この違いは何なんだろう。


そもそも、偽装ですから、豚肉や鶏肉に対するアレルギーがないのなら、健康被害が生じることはありません。
つまり、食の安全とは、とりあえず関係ありません。
詐欺や瞞された、といったレベルの話のはずです。

蛇足ですが、牛肉と思っていたのに豚肉を使うとはけしからん、という意見は、なんだか豚や養豚業者に対して失礼な物言いだと思います。
豚が不当に貶められていてかわいそうです。


次に、写真の違いを見てみますと、大阪本社版は記者会見場で生協の幹部らが頭を下げている写真、東京本社版はDNA鑑定結果の写真が挿入されています。

幹部がそろって頭を下げるシーン、テレビならさらしもんになるという効果があるかもしれませんが、新聞に写真として載せる意味がよくわかりません。
せっかくのスペースなんですから、もっと重要な役に立つ写真を載せればいいのにと思ってしまう、無意味な写真です。



両紙の記事に気になることが書いてありました。
先のDNA鑑定結果の写真に関連することです。
前のブログでも書いたことと同じですが、その後の新しい記事なので、繰り返し書きます。

朝日新聞が独自に都内のスーパーから手に入れた牛肉だけ使用したという食品をDNA鑑定した結果、和牛ハンバーグなのに豚と鶏の陽性反応が出たと指摘しています。
その結果を受けて、店舗から問題の商品を撤去したらしい。

指摘を受けた食品会社の担当者は「豚肉の混入などあり得ない」と困惑しています。
他のテレビ局でも同じような調査をして、同じように多くの混入を見つけて、けしからん、という論調で報道していました。
この食肉会社の担当者の言葉を信じるなら、「ひき肉をつくる機械は牛と豚で兼用している。洗浄が不十分だったのかもしれない」と言っているので、おそらくそれが原因でしょう。


生協のDNA検査の結果を信じるなら、237品目はシロで問題のミートホープのコロッケだけがクロだったらしい。
この結果もすごく極端な気がしますが、とりあえず信じましょう。
この検査結果が本当なら、問題のコロッケ以外は目的の肉以外の混入がなく、きれいなラインで作られていたことになります。そんなことって、本当にあり得るのでしょうか。


上記2点を理解するには、PCR検査をどのようにやったのかを問題にする必要があります。
わずかな混入でも、PCR 検査をすると陽性になります。

DNA検査業者は0.1%の混入でも検査できるとしています。
1%以上の混入で陽性と判定しているとも言っています。
この0.1%だの1%だのといった数字で、科学的な定量的な検査をしている風を装っていますが、実際のPCR反応でそこまでの精度で「定量」することなど不可能です。
PCR法の感度はいいですが、厳密な定量には向きません。
さらに、PCR法そのものの精度はあっても、その前の、試料からDNAを抽出するとき、混在している肉に「定量的にDNAが抽出」される保証もありません。
あくまでも、抽出されたDNA溶液に含まれる各動物種のDNAのある程度の割合がわかるだけです。
これらは、PCR検査の方法の原理を理解すれば簡単にわかることです。

検査方法によっては、わずかな混入でも、検査結果はクロになってしまいます。
問題の食品業者が言い訳しているように、牛肉と豚肉や鶏肉などを同じラインで挽肉を作っているのなら、完全に分離することなど不可能ですから、混入するのは当たり前です。
むしろ、混入しない方がおかしい。
この程度のわずかな混入でもPCR反応は出ますし、方法によっては単なるクロとの判定にもなってしまいます。

食品の加工段階での意図しない混入だけでなく、検査会社における混入も十分に考えられます。
新聞報道によれば、検査依頼が殺到し、検査が追いつかないため、アルバイトを雇うなどして対応していると書いてあります。
検査試料が増えれば検査官の疲労も増し、アルバイト検査員などの不慣れな作業員による誤作業など、少しの試料しか扱っていなかった頃に比べて検査結果の信頼度は低下すると思われます。
あるテレビ報道をみていると、ある検査会社の大きなディープフリーザが映っていて、ふたを開けてみるとギッシリ未検査の試料が入っていました。
フリーザに入れずに、室温と思われる場所に山積みされている未検査の試料も映っていました。
きちんと整理しているんでしょうが、これらの試料をコンタミネーションなしに抽出し検査するのは至難の業に見えました。
シロの試料なのにクロの試料が保管中や抽出中に欠片やマイクロリットル以下の単位の液体が混じっただけでもアウトです。


新聞記事や報道番組を見ていると、新聞記者やテレビの制作者に、DNA検査というものに対する幻想があるような気がしてなりません。
疑いようのない科学的な事実を決定できると信じられているような気がします。

ということで、朝日新聞にクロの検査結果を突きつけられた食品会社がかわいそうでなりません。
濡れ衣を着せられているかもしれないわけでして。
この程度のことで、つまり、牛肉を使った商品に豚の欠片が見つかっただけで、全商品を回収しないといけないというのも、何だかなぁという事件です。



科学の世界には100%や0%の絶対など存在しません。
遺伝子組換え食品でも、100%組換えでないとか、100%組換え種を使っているとか、そういう判定は科学では絶対にできません。
牛肉100%、豚肉0%なんてことも検査によって確定することはできません。
科学とは、あるいは科学的とは、そもそもそういうものです。
一般にはこれができると思っていることから混乱があるように思えます。

本当に消費者は100%牛肉使用のコロッケを求めているのでしょうか。
0.01%でも豚肉が含まれていれば、廃棄処分することを求めているのでしょうか。
このような不当な要求をしても、結果的にコストを負担するのは消費者自身です。


新聞が選んだおもしろい消費者の意見が載っている記事を見つけました。

朝日新聞2007年7月14日付
「生協謝罪の日々 揺らぐ「安心・安全」検査態勢見直しも 偽装ミンチ」

記事で話題にしているのは、例のコロッケだけです。
つまり、牛肉コロッケに豚肉が混じっていたという例のコープブランドコロッケです。
その話題だけで、例によって「安全」の話です。


それより、この記事のおもしろいのは、読者の声です。
朝日新聞にはアスパラクラブ会員というのがあって、その会員に対するアンケート結果が報じられています。
1日で8千人の回答が集まったらしい。

私もアンケートに答えました。
どのような設問だったかはっきり覚えていませんが、自由回答欄には、安全の大安売りをやめようという意見を長々と書いた気がします。
アンケートのタイトルが「食の安全」でしたから。
あと、選びようのない選択肢(自分の意見が選択肢にないのに必須の問とか)に困った記憶があります。自由回答欄にそのことを書き、選択したのとは違う意見だとも書きました。
誘導尋問が多いアンケートでもありました。


8割の人が、事件発覚以来、牛肉使用のコロッケを食べていないと回答しています。
アスパラクラブ会員とは、こんな人たちの集まりです。
#ただし、この問いの選択肢が変だったような。

会員の意見として、「牛肉の冷凍食品は全部捨てた」とか「肉を全く食べなくなった」とかいった過激な意見が載っています。
アレルギーのことは問題にしていないようですので、この人たちは、自宅の冷凍庫にあるコロッケが「安全」ではなく「危険」と判断したんでしょう。
でも、何を恐れたんでしょうか。
単に裏切られて腹が立って捨てたってわけではなさそうです。

「生協までだまされていた。食の安全は崩れた」
この人にとって食の安全って何なのでしょう。
そんなに豚が嫌いなの?豚さん、かわいそう。

「経済的余裕がなく忙しい。冷凍食品を買わざるを得ない社会も問題」
でました、社会が悪い論。
何か事件が起こるたびに、悪いのは社会だ、と責任転嫁し思考停止する人は必ずいます。

ちなみに、引用した声は、いずれも30歳代、40歳代の女性です。
記事には男女の意見は半々になるよう配慮されています。

このような行動を起こす人はともかくとして、このような行動を起こした人の意見をわざわざ載せるという新聞の姿勢にも疑問を持ちます。



ここで、DNA検査会社の話題に戻ります。
AERA臨時増刊号を読んでいると、さらに不安になってきました。
2007年7月25日発売になったAERA臨時増刊号「安心・安全を食べたい」
p54に恐ろしいことが書いてあります。

久留米の検査会社の部長の言葉。
(ちなみに、NHK総合の「つながるテレビ@ヒューマン」で取材していたところと同じ会社です。)
(つまり、・「食の安全」の大安売り テレビは、いつになったら本当の「食の安全」議論を始めるんだろう で取り上げた会社です。)
(この記事に書いているとおり、この会社の検査結果は信用できそうにありません)


久留米の検査会社の部長の言葉。
「あまりにも表示と違うものが多くて、検査ミスじゃないかと不安になるほど。不安が高じて2度検査したサンプルもあるほどです」

えっ???2度検査???ってことは、データは1度だけってこと??
ますます信用できなくなった。


同じAERA臨時増刊号、p55に電気泳動像の写真が載っています。
分子量マーカーの泳動像がメッチャ汚い。
サンプルの泳動像もまともではない。
サンプルのアプライの仕方がへたくそ。どんなへたくそなことをやったかわかる典型的な失敗泳動。初心者でもやらないミスで、初めて電気泳動をやった人でももうちょっとうまくいく。
そんな程度の写真が載っています。
どうせならもう少しまともな泳動像を提供すればいいのに。
日常的にこの程度の泳動しかできないのなら、ますます信用できません。

さすがに、サイズ違いの手袋をしたり、爪伸び放題だったり、チップコンタミしまくりだったりする会社だけのことはある。
NHKの取材映像はやっぱり正直やねぇ。


p53には別の検査会社の写真が。
同じ写真、カラーで新聞に載っていました。
恐ろしい写真です。
(ちなみに、その記事には、「徹夜で検査に臨み」、「休日を返上」、「アルバイトを4、5人雇って」と書いてあります。それだけでも、どんな検査結果が出るのか、恐ろしい。)
ステンのボウルにコロッケ10個ぐらい入れ、コテみたいなものでつぶしています。
こっからDNAを抽出するんでしょうか。
いつの時代の話なんでしょうか。
検査会社の常識って、???


・牛ミンチ偽装事件をPCR法を用いたDNA鑑定法の観点から見てみましょう
・「食の安全」の大安売り テレビは、いつになったら本当の「食の安全」議論を始めるんだろう
・食の安全と安心:素人はなぜ白衣のボタンを留めないのか?ニセ科学を堂々と報じるテレビのニュース番組
・100%や0%は科学的でないし現実的でもない

ニセ科学の生産 農林水産省監修のトンデモ本
ニセ科学の生産 農林水産省監修のトンデモ本 その後

「牛乳有害説」の根拠 デスク席 (毎日新聞社・2007年06月21日)の記事について

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