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zoom RSS 「酵素 エンザイム」にからんだ健康情報5 番外『長生きの決め手は「酵素」にあった』を読む

<<   作成日時 : 2007/06/10 03:30   >>

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鶴見隆史著 長生きの決め手は「酵素」にあった―いま世界が注目!健康を左右する“酵素”のことが、よくわかる本 (KAWADE夢新書・2007年2月刊)
4回にわたって『「酵素 エンザイム」にからんだ健康情報』の話を書いてきました。
これらの話をふまえて、出版される本がベストセラーになり、医者である著者が医療に応用されている酵素医療の理論的な基礎はどうなっているのか検証してみましょう。
医療は理論ではなく実践あるのみ。臨床の場で効果があるのならそれでいいじゃないか。実際に救われる人がいっぱいいるんだから、理論がおかしくてもいいじゃないか。という意見があることも、もちろん知っています。
それでいいという人にとっては、それでいいと思います。
しかし、ここでは、あくまでもその実践医療がどういう理論を基盤にしているのかにだわってみたいと思います。
著書から一部だけ引用させてもらいました。
私のもっている本は初版本です。大ベストセラーで重版されているようですので、改正されているかもしれません。
1ページ分ほどの引用箇所だけで、この本の書いてあることのレベルがわかると思います。
他の箇所のレベルも似たり寄ったりですので。
では、いざ、禁断の酵素医療の世界へ。



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p38-39
 酵素の基本はタンパク質からできており、そのタンパク質は21種類のアミノ酸からできています。
 いっぽう、生命体には4種の塩基からなるDNA(遺伝子)があり、塩基の並びからアミノ酸も構成されます。このことから、アミノ酸(タンパク質)の外殻を持つ酵素は、DNAによってつくられ、DNAの構造上に存在するものと考えられています。その大きさは5〜20ナノメートルという顕微鏡でも見つけられないほど極めて小さなもので、形はほぼ球状とされています。
 酵素の生産能力が個々人で大きく異なるのも、DNAと深いかかわりがあるからでしょう。生まれた瞬間から大量にもっている人もいれば、少ない人もいます。一生につくりだされる量も人によって違います。しかし、すべての人にいえることは、生み出される酵素の量が年齢とともに確実に減少していくということです。
 生まれたばかりの新生児には、高齢者の数百倍の酵素が存在するといいます。生まれた瞬間に一定量の酵素を与えられ、それがどんどん減っていくことから「一生で一定の酵素貯金があって、それを使いきったときが死ぬときだ」という研究者もいます。それゆえ、車のバッテリーにたとえられるのです。

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さて、問題です。。。
この新書版で1ページほどの文章、理解できますか?
おかしなところを何カ所見つけることができますか?
それぞれ指摘し、著者が言いたかったと思われることも、想像してみてください。



まず、「タンパク質は21種類のアミノ酸からできている」説です。

同著の別のところ(p128)で、次のように述べておられます。



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 アミノ酸は、人体には欠かすことのできない大切な物質です。なんといっても人体をつくる細胞の基礎もアミノ酸なのですから。しかも先に述べたとおり、21種類あるアミノ酸をすべて摂ったときにこそ、はじめて吸収されるというやっかいなものです。よって、アミノ酸単体のサプリメントで補うということも困難です。
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この後もトンデモ解説が延々と続きます。
書き写していると頭が痛くなるので、これだけにします。

著者がいうところの21種類のアミノ酸とは、具体体に何なのか。
気になりますね。
その答えは p129 にアミノ酸のリストとして載っていました。

数えると、確かに21種類の物質名が書いてあります。
ところが、このリストの中に、なぜか「グリシン」と「グルタミン」がありません。
その代わりに「オルニチン」と「レクチン」と「グリニシン」が加わっています。それで21種類。
単純に1個余分なものが入っているのかな、という程度にしか予想していませんでしたが、2つカットして、3つも新入りがいるとは。

レクチンやグリニシンがアミノ酸だと初めて知りました(いずれもタンパク質です)。

話の流れからいって、生体に含まれるアミノ酸のことではなく、タンパク質が合成されるときに使われるアミノ酸の話のようです。
というか、この著者、アミノ酸が何かよく知らず、タンパク質合成に使われるアミノ酸とそれ以外のアミノ酸の区別もはじめからしていませんので、よくわからないなりにこの21種類のアミノ酸のリストをつくったのでしょう(オルニチンが含まれていることから)。

ご丁寧にも、この「21種類のアミノ酸リスト」には、各「アミノ酸」の特徴がそれぞれちゃんと書いてありますので、このリストは本気だと思います。
たとえば、グリシンとグリシニンを単純に間違えただけと好意的にとらえることもできるのですが、残念ながらグリシニンの特徴として、「血中コレステロール、中性脂肪低下作用」と書いておられますので、単純な誤植ではなさそうです。


細胞の基礎もアミノ酸」説もすごいですね。
細胞がアミノ酸を基礎としてつくられているのなんて、初めて知りました。
おもしろい説です。
なかなかこんな文章、思いつきません。


21種類あるアミノ酸をすべて摂ったときにこそ、はじめて吸収される」説も初めて知りました。個々のアミノ酸では吸収してくれないらしい。
だから、数種類のアミノ酸しか含まれていないようなサプリメントは意味がないと、強く怒っておられます。
酵素医療は奥が深いようです。
しかし、すごい論理ですね。どんな教科書で勉強されたんでしょうか。
さすがの「ハウエル本」にも、このような説は載っていません。



寄り道してしまいました。最初の引用箇所に戻りましょう。

4種の塩基からなるDNA(遺伝子)があり、塩基の並びからアミノ酸も構成されます

意味がわかりませんね。
塩基の並びからアミノ酸が「構成」されるというのは、どのように想像したらいいのでしょうか?
たぶん、DNAと遺伝子の区別もついていないのでしょう。


アミノ酸(タンパク質)の外殻を持つ酵素」説。なんだろう?
外殻って、何をイメージしたらいいのでしょうか?
それより「アミノ酸(タンパク質)」って、ますますイメージできなくなってしまいますね。
アミノ酸:タンパク質:酵素の関係がどうもあやしい。
そのあやしい関係が、DNAとからむと、ますますわからなくなってしまいます。


酵素は、DNAによってつくられ、DNAの構造上に存在するものと考えられています

勝手に考えられても困るのですけどぉ。
酵素はDNAにくっついた状態で存在すると解釈してよろしいのでしょうか。
先の、「塩基の並びからアミノ酸が構成」説と考え合わせると、一番考えられるイメージは、DNA分子に、その塩基配列にしたがって配置されたアミノ酸が連なって存在しており、その「外殻」を持つ物質が酵素ということになります。
よくわかりませんね。


その後、酵素の大きさと形が書いてあります。
酵素には多種多様あるけど、そのへんは無視していて、酵素という物質は極めて均質なタンパク質であるらしい。


酵素の生産能力が個々人で大きく異なるのも、DNAと深いかかわりがあるからでしょう

どんな「深いかかわり」をイメージすればいいのでしょうか。
普通の分子生物学から、転写や翻訳の制御などをイメージしてもいいのですが、先の記述やこの後の記述からわかるように、どうやら著者はそのことを念頭に置いてかかれているのでもなさそうです。
もともと、消化酵素や代謝酵素は潜在酵素が「ヘンシン」してつくられると考えているわけですから、転写・翻訳機構も遺伝子の存在も、なにもかもすべ無視されています。


生まれた瞬間から大量にもっている人もいれば、少ない人もいます。一生につくりだされる量も人によって違います

別のところに書いておられますが、150年分の酵素を持って生まれてくるのだそうです。
で、無駄遣いすると早死にする。
節約すると長生きできる。

ところで、この150年分の酵素、どこにあるんでしょうか?
先の記述からみて、DNAにくっついて存在すると考えられなくもありませんが、どうもイメージできません。


しかし、すべての人にいえることは、生み出される酵素の量が年齢とともに確実に減少していくということです

トンデモ健康情報の常套手段ですね。
核酸だろうとコラーゲンだろうと、生体がつくる物質はすべて年齢とともに減少していく。
だから補うと若返る。だから補うべきである。だからこれを食べるとよい。
という、ワンパターンの「だから理論」ですね。


生まれたばかりの新生児には、高齢者の数百倍の酵素が存在するといいます。生まれた瞬間に一定量の酵素を与えられ、それがどんどん減っていくことから「一生で一定の酵素貯金があって、それを使いきったときが死ぬときだ」という研究者もいます

もちろん、これらの一連の記述の証拠はどこにも示されていません。
著者が敬愛してやまないハウエル氏の「酵素栄養学」にも、証拠としてミジンコ実験の結果しかのっていません。
そのミジンコ実験も酵素とは関係のない実験です。

酵素栄養学では遺伝子の存在をとことん無視します。
酵素栄養学というのは、酵素栄養学の主役である酵素は、遺伝子の塩基配列をもとにして、転写・翻訳機構によって合成されるというきわめて基本的な事実をなかったことにすることで成り立つお話です。


健康法として、規則正しい生活をしよう、早寝早起きしよう、睡眠をたっぷりとろう、バランスある食事をしよう、適度な運動をしよう、などなど、いろんなスローガンを唱えるのに、別段悪いとは思っていません。
これらを守るだけで、健康的でいられるでしょう。

本書には、酵素栄養学に基づく、著者独自の診療方針がいろいろかかれています。

消化不良はすべての病気の出発点になる。
消化が正常に行われていれば病気知らずでいられる。

このような信念のもと、たとえば、通常使用の4倍量の「プロテアーゼ」を処方することが行われています(具体的に紹介するのが怖いです)。
これは代替医療ではなく「真実の医療」なんだそうです。

しかし、何度も言うようですが、医療の場で、全くでたらめな理論で、通説も無視して診察し治療するというのは、許される行為なのでしょうか?
その「真実の医療」といわれている診療方針のエビデンスは、ここで取り上げたことが基礎となっています。



「酵素 エンザイム」にからんだ健康情報シリーズ
・01 概要と書籍
・02 酵素栄養学とは何か
・03 通説の分子生物学はどのように説明しているのか
・04 基幹となる酵素から一般の酵素の作られ方
・05 番外『長生きの決め手は「酵素」にあった』を読む
・06 番外「病気にならない生き方」などを読む1
・07 番外「病気にならない生き方」などを読む2
・08 番外 22年前の「酵素栄養学」の誕生した頃
・09 番外 32年前の「酵素健康法」
・10 番外 52年前の「酵素療法」

・ミラクル・エンザイム説とコラーゲン 美容と健康はこれでゲットだ
・世の中にはいろんな酵素があります
・食べたタンパク質はどうなるのか 経口摂取した機能性タンパク質の働き方


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