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zoom RSS 「酵素 エンザイム」にからんだ健康情報3 通説の分子生物学はどのように説明しているのか

<<   作成日時 : 2007/06/03 02:22   >>

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ここまで述べた「酵素栄養学」は通説の分子生物学とは全く異なるものです。通常の分子生物学で酵素栄養学を説明することは全く不可能で、酵素栄養学と通説の分子生物学は全く独立しています。
通説の分子生物学を学んだ人にとっては、酵素栄養学は異質なものに見えるでしょうが、通説の分子生物学を知らない人にとっては、酵素栄養学は科学的に見えるかも知れません。
ここでは、酵素栄養学はニセ科学だと断定しませんが、酵素栄養学がどのようなものであるか詳しく見ていく必要がありますし、また、比較するためにも、通説の分子生物学の知識も必要になります。


では、通説の分子生物学をざっと見てみましょう。
通説の分子生物学によれば、酵素の本体の多くはタンパク質であり、体内の化学反応を触媒するものです。
触媒というのは化学用語で、化学反応の前後で変化しないが、化学反応の活性化エネルギーを下げる役割を持つものです。といっても、高校化学を知らない人にとっては何のことやらわからないと思いますが、ようするに、生体内の化学反応を特異的に迅速に進めるために必要なものと思って下さい。

生体内に酵素は何種類あるのかははっきりわかっていません。おそらく数千種類の単位あるのでしょう。あらゆる化学反応にとって酵素は必要になりますので、種類も豊富です。



酵素栄養学によれば、潜在酵素は生まれる前に作られ、それ以降は消耗する一方だそうです。一般の酵素である消化酵素や代謝酵素は、潜在酵素から作られるのだそうです。
では、通説の分子生物学ではどのように酵素が合成されるのでしょうか。

先に見たように、酵素の多くはタンパク質です。タンパク質には酵素の他にコラーゲンのような構造タンパク質、抗体などのような機能タンパク質など種類も構造も豊富です。ヒトの場合、おそらく10万種類ぐらいあると言われていますが、正確な数は数える方法によって異なります。

ヒトを含め、地球上のすべての生物のタンパク質は20種類のアミノ酸が直鎖状に連なった形でそれぞれの生物が合成します。
アミノ酸のつながる順番と長さにより、タンパク質の種類と構造が決まり、その働きが決まります。
このアミノ酸のつながる順番と長さは「遺伝子」に書いてあります。
すなわち、すべての生物は遺伝子の情報にしたがってタンパク質を合成しています。

すべての生物は細胞からなります。
細胞の中にはDNAという化学物質が含まれています。
DNAは4種類の塩基が直鎖状に連なった化合物の名前です。
4種類の塩基のつながる順番と長さによってDNAの構造は決まります。

ヒトの場合、ひとつの細胞の中に含まれるDNAの長さは約30億塩基あります(実際には二本らせんになっていて2セットある)。
ヒトは約60兆個の細胞からなりますが、一部の例外を除き、各々の細胞の中には基本的には同じ配列のDNAが入っています。
30億塩基対あるDNAの中に2万数千ヶ所の遺伝子と呼ばれる領域があります。遺伝子の大きさ(塩基の長さ)は様々で、遺伝子の分布もランダムです。

タンパク質のアミノ酸配列は遺伝子の塩基配列に書いてあります。
体内にあるタンパク質は体内にあるDNAの遺伝子の領域の情報(塩基配列)に従って合成されます。

このように、タンパク質を作るための情報は自分自身が遺伝子の形で持っており、その情報を元に、タンパク質は自分で合成することができます。
適当に合成しているのではなく、必要なときに必要な分量だけ合成しています。合成されたタンパク質もいつまでもあるのではなく、ある一定期間過ぎれば分解されます。
つまり、つねに、合成・分解がおこなわれています。


酵素が触媒する化学反応は非常に特異的です。
特異的というのは化学反応の出発物質を選ぶというのと化学反応の終結物質の種類を選ぶのと両方の意味があります。
この特異性は、基本的にはアミノ酸配列によって決まります。つまり、遺伝子の領域のDNAの塩基配列によって決まります。

ヒトとサルではDNAの塩基配列がよく似ています。
したがって、合成されるタンパク質のアミノ酸配列もよく似ています。
しかし、ヒトと植物では、よく似た化学反応を触媒する酵素であっても、そのアミノ酸配列が少し異なり、酵素の特異性などの機能も異なる場合が多くなります。


さて、酵素栄養学では、酵素のことをどのように説明しているのか、もう一度振り返ってみましょう。
基本概念として、潜在酵素という新しい物質を持ち出します。
もちろん、これは概念であって、実際に潜在酵素の実在性が証明されているわけではありません。
この潜在酵素は消耗品であって、150年分ぐらい持って生まれてくるそうです。どこに蓄えられているのかは説明されていません。この潜在酵素を無駄遣いすることなく生活するのが長生きと健康にとって最良の方法となります。

食事をするとそれを分解するために消化酵素が使われるとしています。大食いすると、必要以上に消化酵素が使われるのでムダになります。
ということは、ギャル曽根さん、大丈夫でしょうか?早死にするんじゃないかと心配してしまいますね。

補給には生野菜など生きた食材が必要です。加熱調理されたものばかり食べていると、消化酵素を消耗するだけで補給できない。生野菜を食べれば、消化酵素が使われますが、生きた野菜に含まれる酵素をとることで酵素の補給が可能だそうです。

酵素の温存は病気の治療にも役立つらしい。
酵素の温存に効果的な方法は半断食。
例えば、ガンになったとき、無理して栄養をつけないで半断食をする。
すると、消化酵素の使われる量が少なくなり、その分代謝酵素として使われる量が増えるため、免疫力が増加し、結果的に癌に有効だという説です。
大食いすると消化酵素が必要になり相対的に代謝酵素が少なくなり、不必要に体内酵素を無駄遣いすることになり、結果的に免疫力も低下し、癌が悪化するという考え方です。
おもしろいですね。

朝食をたっぷり摂るのも潜在酵素のムダにつながります。朝食に加熱した卵や加工したハムなどを食べると、消化酵素が使われてしまい、潜在酵素のムダになります。


まず、体内酵素が消耗品だと言うことについて、通常の分子生物学とは相容れません。
酵素は触媒ですから、反応の前後で変化しません。1回使われたからと言って消えて無くなるわけではありません。何度も使われます。
足りなくなることもなく、必要なタンパク質だけ必要なときに必要な量が遺伝子から転写・翻訳により新たに合成されます。

体内で必要な酵素は消化酵素だけでなくあらゆる代謝に必要な酵素など細胞や個体が生きていく上で必要な酵素はたくさんあります。先に述べましたように、おそらく数千種類、もしかしたら一万種類近くあるかもしれません。
どの酵素をとっても、非常に特異的に反応を触媒します。
酵素であれば何でもいいわけではありません。

生態に存在するタンパク質の中で、酵素は特別な存在というわけではありません。酵素もコラーゲンやアクチンも各過程の調節因子も、いずれもそれぞれの役割を持っており、それぞれ必要なときに必要な量のタンパク質が合成されます。

酵素は多種多様で、消化酵素、代謝酵素と単純に分類できる物ではなく、また分類したところで、それほど本質的な境界があるわけでもありません。

これらの酵素を作るために必要な情報は、すべて自分のゲノムの中に遺伝子として納められています。
ヒトが生きていく上で必要な酵素を作る情報は元々ちゃんとヒト自身が持っています。
その遺伝子から、転写・翻訳システムによって、必要な酵素は必要なときに必要なだけ作られるという巧妙な仕組みが整えられています。
このシステムの中に、食品に含まれる生きた酵素をあてにするというシステムは用意されていません。もし食品に含まれる生きた酵素が必要不可欠なのであれば、いつ補われるかわからない酵素をあてにしなければならず、非常に不安定なシステムになってしまいます。

酵素栄養学を唱える人は、そうではなくて、補助的に食品酵素が必要だと言いたいのでしょう。しかし、その場合、酵素の基質特異性が異なる食品由来の酵素が代謝酵素の補助になることは考えにくく、消化酵素の代用程度にしかあてにできません。

この消化酵素にしても、少し考えればおかしなところが多々あります。
酵素栄養学では、生きた消化酵素を含む食品を食べれば消化が促進され、自身の消化酵素を節約できるとしています。
そうであれば、摂取した後、胃の中や腸の中で消化酵素だけが分解されずに酵素活性を保っていなければ機能しません。食品中の消化酵素といっても本体はすべてタンパク質ですから、他の食品中のタンパク質と同じように胃や腸の中で分解されてしまいます。

そもそも、生きた食材に含まれる消化酵素がもし摂取したヒトの胃の中で働くのであれば、なぜ、食品となる生物自身が消化酵素を持っていたときに、その消化酵素が働いて食品自身が自己消化しないのでしょうか。なぜ、食べたときにだけ都合よく消化酵素が働き、食べる前はなぜ消化酵素が働かないのでしょうか。

食品に含まれる酵素がそんなに大切なのであれば、食品が持つ消化酵素により、自己消化したものを作り、それを食べればいいではないかとさえ思ってしまいます。



酵素栄養学を唱える方々が、
規則正しい生活をしましょう。夜更かしはやめましょう。深夜食はやめましょう。
生野菜をたくさんとりましょう。
というのは、別段問題はありません。

これらの行動により、健康体になるということはあるでしょう。
生野菜にはヒトにとって有用な栄養素が含まれますし、ガンの予防にも役立つものが含まれているでしょう。
規則正しい生活で睡眠をたっぷりとるのも健康にとって良いでしょう。
酵素栄養学をネタに生き方を特のも別段問題ありません。よく生きようとする考え方にケチをつけるところは全くありません。

しかし、その生き方に酵素栄養学を科学を装って説明する仕方が少しおかしいのではないかと思うわけです。

一番深刻なのは、医療への応用です。
ミジンコの、しかも酵素とは関係のない実験しかないデータのみをエビデンスとしていきなり臨床に応用してしまうことは、やはり行き過ぎではないでしょうか。
酵素栄養学では、摂取した酵素の効能を絡めて説明されるわけですが、この説明が通説の分子生物学と相容れないものです。

ちなみに、この説を唱えている人は、この考えを何と言っているかというと、

『現時点では仮説にすぎません。(略)「科学的根拠に欠けるのでは」というご意見もありました。私は学者ではなく、あくまでも臨床医なので、科学理論としては厳密に詰めきれていない面もあるでしょう』

このように逃げておられます。

『しかし、現代の栄養学と、私のエンザイム説と、どちらが正しいのかは、読者の方がご自分の体の声に耳を傾けていただければ、おわかりいただけると思っています』

と自信たっぷりでありながら、読者に判断を任せています。

この自信により勇気づけられたのかどうか知りませんが、この科学的な根拠もない、むしろ現在の科学で完全に反証できてしまう説を根拠にした治療が行われているから驚きです。

この酵素栄養学をすっかり信じ込んだ医者が、自分の病院において酵素栄養学にもとづいた治療をおこない、その医療を公言しています。
その医院のいくつかに、どのようなエビデンスをお持ちで酵素栄養学を治療に使っておられるのか、文献だけでもいいので教えて欲しいとのメールを出しましたが、まだどこからも返事がありません。
以上に見たように、私はどの著作を見ても確かなエビデンスを見つけることはできませんでした。



「酵素 エンザイム」にからんだ健康情報シリーズ
・01 概要と書籍
・02 酵素栄養学とは何か
・03 通説の分子生物学はどのように説明しているのか
・04 基幹となる酵素から一般の酵素の作られ方
・05 番外『長生きの決め手は「酵素」にあった』を読む
・06 番外「病気にならない生き方」などを読む1
・07 番外「病気にならない生き方」などを読む2
・08 番外 22年前の「酵素栄養学」の誕生した頃
・09 番外 32年前の「酵素健康法」
・10 番外 52年前の「酵素療法」

・ミラクル・エンザイム説とコラーゲン 美容と健康はこれでゲットだ
・世の中にはいろんな酵素があります
・食べたタンパク質はどうなるのか 経口摂取した機能性タンパク質の働き方


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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
このなっちゃって酵素栄養学ですが、動物、犬の世界では大変幅を利かせているのです。目減りする酵素を補うとか平気で言っている、犬のプロが大変多いです。作用機序について問いただすと、挙げ句の果てには、健康によいことに変わりがないってことになるのですが、果たしてそんなものに高額の値段を付けて販売しているのは犯罪なのではと思ってしまいます。
naokoro
2012/04/19 17:10
コメントありがとうございます。最近は「セレブ」(ニセセレブともいう)とリンクしていることが多いらしく、その上流階級の方々が所有しておられるペットやらにも同様に無駄金を掛けている、いやボッたくられている、という状況もあると思っています。
yoshi
2012/04/20 05:54

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