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zoom RSS 「がんは8割防げる」を読んで 意図的に都合の悪いデータを隠すことと証拠なしに発ガン性を決めつけること

<<   作成日時 : 2007/06/01 22:22   >>

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岡田正彦著「がんは8割防げる」(詳伝社新書・2007年6月刊)
実際のガンの原因を分析し、発ガンを防ぐ方法を提案するというおもしろい本です。
科学的な根拠をあげ、欧米の論文も引用しながら説明しているとしています。タバコの害を徹底的に指摘するなど、いろいろおもしろいデータが載っています。
しかし、次の2点に重大な疑問があります。
1点目は、発ガン物質のデータを意図的に隠していると思われる点。
2点目は、根拠を全く示さずに危険性を断定的に述べているところがある点。
1点目は、植物が本来持っている発ガン物質のことで、好意的に見れば話をわかりやすくするためととらえられないことはないのですが、どうも意識して隠しているように見えます。
2点目は遺伝子組換え食品にかんすることで、遺伝子組換え食品がいずれ発ガン性が問題になると、全く思い込みのみで断定しています。
この二つの疑問点はリンクしています。

まず1点目から検証しましょう。

p109とp149にワラビの毒にふれ、あく抜きの重要性が指摘されています。しかし、これ以外に植物が本来持っている毒物にかんする記述はp151のジャガイモの芽の話ぐらいです。
ジャガイモの例は発ガン物質ではありませんから、植物が本来持っている発ガン物質の例はワラビだけということになります。

本書では、野菜のガン予防になる点は盛んに強調されています。ところが、野菜自身が発ガン物質を持っているということに全く触れられていません。

エイムズ試験で著名なエイムズらの報告によると、植物から抽出された47種類の天然の殺虫物質の半数以上が動物実験で発癌性を確認されています。
その植物というのは、リンゴ、バナナ、ブロッコリー、キャベツ、セロリ、カリフラワー、コーヒー、レタス、ジャガイモなどなどです。
普通の人は、一生のうちに1万種類の天然の殺虫物質とその成分を食べ、その量は摂取する人工の殺虫剤の約1万倍に相当すると報告されています。
コーヒー豆も植物由来です。コーヒーには、千種類以上の化学物質が含まれており、そのうち発ガン性試験が行われたのは26種類、うち19種類が齧歯類にガンを誘発したこともあわせて報告されています。

Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 87, 7772-7776 (1990).
Ames, B. N., Gold, L. S., Chemical carcinogenesis, Too many rodent carcinogens.

Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 87, 7777-7781 (1990).
Ames, B. N., Profet, M., Gold, L. S., Dietary pesticides (99.99% all natural).

Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 87, 7782-7786 (1990).
Ames, B. N., Profet, M., Gold, L. S., Nature’s chemicals and synthetic chemicals, Comparative toxicology.

もう一つ気になることが、p137-138に書かれています。
「昔は、『野菜は生で』などと誰もが呪文のようにとなえていたものです。その大切な習慣が忘れられてしまったようで、このことがいくつかのがんの増加に深く関係しているように思われます」

「思われます」で結ばれた文章ですが、疑問に思ったので書きます。
この「昔」というのがいつなのかわからないのでハッキリ言えません。
野菜の栽培に牛糞、馬糞、鶏糞、それに人糞を使っていた頃の話でしょうか?
もしそうなら、このような「有機野菜」には寄生虫やその卵がたっぷり含まれています。
調理の仕方によっては生きた卵を食べることになります。じっさい、そのころの人々の多くは寄生虫を飼っていました。
農薬を使わないのであれば、野菜は多くの感染症にもかかっています。
洗っただけでこれらが除けるわけではありませんから、野菜を生で食べるということは、新たに寄生虫をたっぷり摂ることになるわけですから、いくらなんでも「昔」の人はそこまで冒険家ではないでしょう。用心して野菜を食べていたはずです。ナマは危険なので、安心して食べられるようにする調理方法も考案されています。
少なくとも、「野菜は生で」と呪文を唱えながら食べるという自殺行為はしていないはずです。
O-157騒ぎは、ナマで食べることへの教訓ではなかったんでしょうか。
現在ナマで安心して食べられるのは、適切な農薬や添加物の使用、品種改良、栽培方法の改良などのおかげです。
「昔」に今と同じように安心してナマで食べられたとはとても思えません。


次に2点目の疑問点です。
p146-147
「味噌、醤油などの調味料には、人知れず遺伝子組み換え作物が使われていたりします」

これがなぜ問題なのか、もちろん何も書いてありません。
遺伝子組換え作物が危険であることが前提で書かれていますので、どのような理由で遺伝子組換え作物が危険なのかは、本書のどこにも全く書かれていません。


「たとえ汚染されていることがわかったとしても、消費者の側で取り除くことができません」

筆者にとっては、遺伝子組換え作物は汚物であって、これが使われることは汚染らしい。
おもしろい論理です。
もちろん、遺伝子組換え食品がなぜ汚物なのかは、どこにも書いてありません。


「生鮮食品の大部分は国産で産地直送ですから、遺伝子が組み換えられている心配もありません」

遺伝子組換え技術と遺伝子が組換えられることの違いを区別しないで書くのは詭弁ではないでしょうか。
このふたつは決定的に違うものです。
普段食べてる野菜が、遺伝子をどのようにいじくり回して作られたものか考えるだけで簡単にわかることです。
国産の野菜が「遺伝子が組み換えられて」いないとする論の立て方は、読者を誤誘導します。
このように、これらを一緒にして議論するのは、生協やグリーンピースなどのそれなりの遺伝子組換え反対派の団体がとる常套手段です。
プロの筆者までその論理にのるのはちょっとマズいのではないでしょうか。

その筆者は最後には、

「遺伝子組換え食品は、これからも断固、拒否していくべきでしょう」

と言い切ってしまうのですが、その根拠は、遺伝子組換え技術と遺伝子を組換えることが同じだとの認識から来るものですから、何をか況やですね。


「なお農産物と畜産物が遺伝子組み換えですっかり改造されてしまい、取り返しのつかない事態が起こりつつあります」

初めて知りました。こんな「取り返しのつかない事態」。深刻ですね。
いったいどの世にこんな深刻な事態が起こりつつあるのでしょう。
どこか違う惑星の話でしょうか?

もしかして、先ほどの詭弁の続きなのかも。
ここで話題にしているのは、遺伝子組換え技術のことではなく、通常の品種改良のことなのかもしれません。それならよくわかります。
たとえば、江戸時代の人が食べていた野菜と現在の野菜を比べれば、人による不断の努力による品種改良の結果、遺伝子がすっかり組換えられ改良されてしまっています。
それらを現在私達が食べています。
その筆者のいう心配のいらない「国産で産地直送」の「生鮮野菜」に、「取り返しのつかない事態」が起こりつつあるんでしょうか。
この話なら確かによくわかります。


「各国政府は遺伝子組み換え技術の安全性をやっきになって強調していますが、その保証はどこにもありません」

決定的に誤解していますね。
躍起になって強調していると、多分そう思いたいだけではないでしょうか。
なぜ強調しないといけないことになったのかを考えてみれば、この論理はおかしいことに簡単に気がつくはずです。
その保証がないことに別段問題がなく、もしその保証が欲しいのであれば、1点目の疑問で指摘したように、遺伝子組換え技術で品種改良する前の品種に対して同じことをいってみれば、その論理がおかしなことに簡単に気がつくはずです。

あるいは、ここで私が述べていることが、「やっきになっている」ともし感じるのであれば、それも同じ論理です。最初から正しい認識があれば、「やっきになる」必要などなくなってしまいます。


「遺伝子を組み換えたことで、この世に存在しなかった物質が生まれ、未知の食品ができてしまいました」

どんな物質が生まれたのでしょうか?寡聞にしてそのような証拠を聞いたことがありません。もしかしたら、あの悪名高い「トリプトファン事件」を念頭においた記述でしょうか。それなら、この記述は全くのデタラメになります。
トリプトファン事件はまだ有効なのでしょうか

「未知の食品」と書くところに、遺伝子組換え技術に対する奇妙な認識が出ているように思えます。
遺伝子組換え技術を使って作られた作物と、それを使わずに作られた作物の本質的な違いを、遺伝子とゲノムのレベルで考察すれば、すなわち、普段食べている野菜がどのようにして作られたのかを考えてみれば、ここで述べられている「この世に存在しなかった物質」や「未知の食品」がナンセンスな物言いであることが簡単にわかります。


「これまでにわかっているだけでも、さまざまな遺伝子組み換え食品が重大なアレルギー疾患を起こしていることから、いずれ発がん性も問題になってくるに違いありません」

現在市販されている遺伝子組換え作物が原因となって、どのような重大なアレルギー疾患が報告されているのでしょうか。これも寡聞にしてその報告を聞いたことがありません。
「重大なアレルギー疾患」が死に結びつく怖ろしい病気で、もし本当なら確かに大変な事態です。
ですから、これはどこの惑星の話なのか、しっかり明示して欲しいものです。
もしかして、あの悪名高い「ブラジルナッツ事件」のことでしょうか。

最後に遺伝子組換え食品に発ガン性が出てくると断定的に述べておられます。
1点目の疑問で指摘したように、筆者が通常の野菜などに発ガン物質が含まれていることを意図的に隠していたのは、もしかしたらこれが言いたいためだったのかもしれないと勘ぐりたくなります。

なにも遺伝子組換え技術によらなくても、遺伝子組換え技術を使う前の品種には立派な発ガン物質が多種類含まれていることは明白になっていて、すでに問題になっています。
筆者は遺伝子組換え技術を使うことで発ガン性が問題になると言い切っていますが、そもそもそんな証拠は今までに報告されていませんし、遺伝子組換え技術に依らなくても天然の発ガン物質は認められています。

その事実を隠してまで、遺伝子組換え技術をおとしめないといけない理由はなんなのでしょうか?

私は、遺伝子組換え技術を推進しろとか安全であるとか言っているわけではありません。
安全か危険かと言えば、絶対安全がこの世に存在しないのですから、危険なのに決まっています。
問題はどの程度リスクがあるかでしょう。
つまり、普段食べている(発ガン物質入りで天然殺虫剤入りの)野菜とくらべて、それに遺伝子を1個〜数個導入することで、リスクがどの程度変化するか見極めることでしょう、
普段食べている野菜の安全性チェックはほとんどなされていないことから、むしろ膨大な安全性チェックがなされている遺伝子組換え作物の方が安心できるのではないでしょうか(安全だといっているのではありませんよ。念のため。いつも早とちりする人がいますので)。


以上、本書に不用意に挿入された、わずか1ページ分ほどの分量の記述だけにこだわってしまいましたが、ここに指摘した2点だけで本書を評価しているわけではありません。
ここに指摘した部分以外は、多くのデータを紹介しながら科学的に論を進められています。非常にいい本だと思います。
それだけに、特に2点目で指摘した部分には全くデータが示されておらず、思い込みだけで述べられているようにみえ、その部分が本書全体から浮いてしまっているのが残念に思いました。

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