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zoom RSS ニセ科学の伝播 遺伝子とゲノムは違います。一見まじめなテレビ番組のニセ

<<   作成日時 : 2007/04/24 00:56   >>

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4月18日放送の「ザ!世界仰天ニュース」DNAスペシャル2 人格は遺伝が作る?環境が作る?
この番組の結論は、双子の研究から、人格形成は環境より「遺伝子」の影響が大きいというものでした。
ヘンなところがいっぱいありました。
1.「遺伝子」の使い方が変。
2.「氏か育ちか」論争の極端な一方の説のみ紹介している。
3. 多くの双子研究は「捏造」だと判明している。

またヘンな「遺伝子」がテレビ番組になっています。一卵性双生児を利用して、人格形成が環境か遺伝かを問うものです。「氏か育ちか」論争には、当然ながら決着はつきません。そもそも問が間違っています。そうでなくても、双子研究では数多くの捏造が曝露されています。
「氏か育ちか」というのは英語の「nature vs nurture」と語尾が同じ語を対立させた用語の訳です。
ちなみに、M. リドレー氏は「nature via nurture」という本を書いて、この論争を収束させようとしています。

テレビは、血液型性格判断の例にもあるように、遺伝子決定論が好きです。
結論がわかりやすいからでしょう。
血液型性格判断の場合、たったひとつの単糖を転移する2種類の酵素をコードする遺伝子の4つの組み合わせによって性格が決定され、分類できる、という話です。
他の3万近くの遺伝子は眼中になく、ただひとつの対立遺伝子だけに注目します。
というか、ゲノムの中のひとつの遺伝子に過ぎないことに気がついていないだけでしょうが。

このテレビ番組でが「環境か遺伝か」というのを一卵性双生児を利用して検証しています。
結論は「遺伝」でした。
この番組の作り方は、いろいろおかしな所はあるのですが、一番マズいと思ったのは、遺伝の話がいつの間にか遺伝子になっていることです。
というか、遺伝と遺伝子が混乱したままになっています。テロップでは遺伝とかいてあるのに、再現VTRでは遺伝子になっています。
一卵性双生児は同じ遺伝子を持っていて、彼らを観察することで、知能やクセや好みや行動様式を決定しているのは遺伝子だというのがわかった、という内容です。遺伝子が人格を決定していると。

この「遺伝子」という言葉の使い方がヘンです。

「遺伝子」を一般名として使うこともありますが、○○の遺伝子というように、個別の特定の遺伝子としても使います。この区別をしないと混乱してしまいます。
また、遺伝子全体を表すときは、ゲノムという言葉があるので、ゲノムの概念はわかりにくいことがらテレビなどではゲノムを使うのを避ける傾向にありますが、やっぱりゲノムを使う方が混乱しないと思います。

この番組では、遺伝子を強調しすぎています。
遺伝子を人の知能や行動様式を決定しているものとして、かなり重要な意味を持たせて使っています。

ここでなぜこんなコラムを書いているかというと、遺伝子組換え技術のことが頭にあるからです。

遺伝子組換え技術に反対する人たちは、この技術は悪魔の技術で、神をも怖れない傲慢な技術だと脅かします。フランケンシュタインのようなもの(といっても、実際の小説ではフランケンシュタインは怪物を作った博士の方で、怪物の名前ではないのですが)をつくると宣伝されます。
なぜなら、例えばトウモロコシの遺伝子に土壌細菌の遺伝子を導入したり、ヒトの遺伝子を挿入したりする、とてつもなくおそろしい技術だと大げさに騒ぎます。
このときに使われる遺伝子という言葉には、先にあげた双子の遺伝子と同じような意味で使われているのだと思います。

この番組のように、双子の知能も行動様式も遺伝子が決定しているといい、人の知能や行動様式は遺伝子そのもので、そういう意味で、この場合、遺伝子という言葉にかなり大きな意味を含ませて使われることがあります。そのような意味を持つ遺伝子であれば、細菌の遺伝子やヒトの遺伝子を植物に導入するとなると、植物が細菌やヒトの何かしらの要素を持つようになり、植物が細菌やヒトの重要な性質が導入されるのではないかと怖れるわけです。

たしかに、遺伝子にそのような重大な意味があるのなら、このようなお化けができるような自然界では決して起こりえないようなことを人為的に起こすのはけしからんというイメージになってしまいます。
植物と人、植物と細菌ほど離れていなくても、トマトにハエの遺伝子を導入するなんて、トマトが汚くなりそうでイヤだとか、ナスにゴキブリの遺伝子を導入すれば、ナスがますます黒光して足まで生えてきそうなイメージがわいてきて、気持ちが悪いとか、そんなイメージまでわいてくるかも知れません。

しかし、安心してください。遺伝子にそんな大きな意味はありません。

ヒトにもトマトにも数万の遺伝子があります。
ひとつの遺伝子にはタンパク質のアミノ酸配列が書いてあるだけです。
ひとつの遺伝子は一種類のタンパク質だけをコードしている場合もありますが、複数のタンパク質を作る情報を持っている場合もあります。

遺伝子組換え技術でできることは、ある生物のゲノムに別の生物の遺伝子をひとつ導入することだけです。
あるいは、ある生物のゲノムに含まれるあるひとつの遺伝子の働きを消してしまうことです。

したがって、できあがった遺伝子組換え体は、組換える前のものと比べて、ひとつ余分に遺伝子を持っているか、元々持っていた遺伝子をひとつなくすかだけです。
ゲノムには変化しなかった数万の遺伝子が残っています。

農林水産省中国四国農政局監修のとある本の用語解説欄に、(遺伝子組換え作物は)「トウモロコシの遺伝子に虫を殺す毒素を出すカビの遺伝子を打ち込んだもの」と書いてあります(この本は非常におもしろい「トンデモ本」なので、別のコラムに書く予定です)。

「トウモロコシの遺伝子」に「カビの遺伝子」を打ち込む。

これなら、確かにお化けができると思ってしまいますね。
ちなみに、この表現、農水省監修本にまじめに書かれたものです。
誤解を正すために書かれた文章ではありません。農水省の「中国四国農政局」はマジで上の表現を使っています。念のため。

問題のテレビ番組にマズいと感じたことと、この「遺伝子に遺伝子を打ち込む」と書いている農水省中国四国農政局の表現の根は同じです。

こんなところから、遺伝子組換え技術にかんする変な「遺伝子」像ができあがり、そこから遺伝子組換え技術にかんする「ニセ科学」が横行することになるのだと思います。


「氏か育ちか論争」に少しだけ補足します。
今ごろなぜこんな特集番組を放映するのかさっぱりわかりません。
なぜなら、「氏か育ちか」論争はとっくに終わっていますし、もし論争があったとしても、たいていの論争の相手は幽霊です。
つまり、論争する相手は、遺伝が重要だ、とか、環境こそ重要だ、とかいう極端な意見であり、その極端な意見は単なる想定上の相手であって、実際にこんな極端な意見を言う人がいないからです。
かつては、幽霊を相手にして自説を展開するというのが多かったわけです。
ところが、トンデモニセ科学業界では、この幽霊が実体化することがまれにあります。
このテレビ番組がその典型例です。


もし、人格の形成には環境が重要であって、遺伝は関与しないなどという、真っさらなノートが用意されているだけで、書き込むのは環境だ、という意見があったとしましょう。
これが変なのは、チンパンジーゲノムとヒトゲノムの違いは何なのかを問えばすぐにわかるはずです。

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