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zoom RSS 科学報道の信頼度 ニセとホンモノの見分け方

<<   作成日時 : 2007/04/28 03:28   >>

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多くの人は科学的発見の情報や健康情報を最初に知るのはテレビか新聞だと思います。
科学的新知見情報の信頼度を見抜く方法が、いろんな書籍に書かれています。

ここでは、最近の話題をからめながら、簡単にまとめてみました。

発表方法について
新聞、またはテレビで報道や紹介される情報に次のキーワードがあるかないかで、その情報のある程度の信頼度が測れます。

1. 新聞またはテレビ発表のみ
2. 学会発表のみ
3. 論文発表
4. 総説

実験方法について
健康情報などに関する新発見ニュースには、上記の発表方法の他にどんな実験をおこなったかによっても、その信頼度を測ることができます。

1. 細胞レベルでの実験
2. 動物実験
3. 臨床応用

個々の項目について少し解説を加えましょう。


発表方法について
1. 新聞またはテレビ発表のみ
遺伝子組換え作物の危険性を摘発する初期の情報は、このレベルでした。
本人がそういっているだけ、という程度の信頼度しかありません。同業者の批判もありませんから、信頼度はかなり低いと見てよい。
くだんの遺伝子組換え危険説は、その後、追試などの結果から、全面的に否定されてしまいました。しかし、遺伝子組換え技術を反対したい人にとっては、このテレビ発表を唯一の根拠として、いまだに大量コピー生産され続けています。

2. 学会発表のみ
ある昼の健康情報を多く扱っているバラエティ番組は、全国で行われる学会にスタッフを派遣し、要旨集を全部入手し、精査の上選ばれた情報のみ紹介していると自慢していました。
しかし、学会員であれば、学会発表は可能です。
「水伝」のような、多くの人がニセ科学だと認識している研究であっても、日本物理学会という立派な学会で発表されます。基本的には発表したいと言えば発表できます。
したがって、これも、1. と同程度に、本人がそういっているだけ、というレベルでしかありません。
その昼の情報番組の根拠はその程度だと思ってみればいいだけで、その番組がウソだとか全然信頼できないとか言っているわけではありません。念のため。相対的な信頼度の話です。
NHKの情報番組が週刊誌に捏造だと叩かれ、番組側が反論していました。
http://www.nhk.or.jp/gatten/news/info20070409.html
その反論を読んでみると、その番組の科学的根拠は「学会発表」でした。NHKの情報番組でも学会発表に重点を置いているということがよくわかる事件でした。

3. 論文発表
査読システムのある論文誌の場合、同業者による査読という過程が途中にあり、これをパスしないと論文にはなりません。性善説に立っていますから、捏造などはないとの前提ですが、実験の組立や方法。結果にヘンなところがないかチェックされ、審査に通ると論文になります。
したがって、ある程度の同業者によるチェックは入っていますので、1. や 2. にくらべ、格段に情報の信頼度は増します。
ただし、論文誌にもピンからキリまであるため、どの論文誌に載ったかでも信頼度のランクがあります。
また、論文が総説などに引用されることで、信頼度がさらにアップします。

ニセ科学のいうところの科学的根拠に、学会発表のみ、というのがよく出てきます。
あるいは何らかの実験を行った、といっているだけとか。
ニセ科学の科学的根拠に、論文がないのが多くあります。あればそれを根拠にするはずです。

しかし、学会発表はダメだといっているわけではありません。
発表するのには段階があるということがいいたいだけであって、学会発表は全部信用できないという意味ではありません。
学会発表程度の根拠で、断定的に述べるのがニセ科学に多いということです。



実験方法について
健康情報などで流される実験方法のレベルにはいろいろあります。どのレベルの実験なのかにより、ヒトへの効果などの信頼度が変わります。
1.の細胞レベルと2.の動物実験は基礎研究と呼ばれています。3.の臨床研究と区別されます。

1. 細胞レベルでの実験
細胞レベルでの実験に先立ち、多くの場合、細胞を使わず、細胞をすりつぶしたものや、人工的に合成した化合物を対象にした基礎実験が行われます。タンパク質や遺伝子のレベルでの実験です。
この「試験管内」での実験の成果から、つぎの細胞レベルでの実験に発展することが多い。
細胞レベルとは、動物やヒトの培養細胞を使った実験のことです。動物やヒトの個体を実験対象にした場合、個体差や複雑さの関係で、効果を見極めるのが難しいときがあります。そのようなときには、均質な細胞(多くはクローン細胞)を使い、一定条件下で培養し、目的の物質の効果を見極める方法があります。
この方法には、同一条件下で実験が行えるというメリットはあります。
しかし、動物個体ではなく、実験対象はある種の細胞のみであり、培養という人工的な環境下から得られる結果に過ぎないことを頭に入れておく必要があります。
主に基礎的なデータを集めるときに使われます。
新聞記事などで、試験管内実験や細胞レベル実験のみしかなく、なおかつ、学会発表も論文もなく、それでいて、ある病気に効果があるとか、いきなりヒトへの応用可能だ、などといった情報は要注意ということです。
テレビのバラエティ番組では、この手の情報から、○○は○○病に効く、とかダイエット効果ありとか言う情報に化け、テレビ独自のトンデモ実験を追加して、大げさに情報が流され、多くの視聴者は騙されることになります。

2. 動物実験
細胞レベルである程度の傾向や効果が見られれば、動物個体、多くはマウスやラットを使って実験することになります。よりヒトに近い条件になるため、信頼度は増します。しかし、動物実験の場合、遺伝的に均質な動物系統であっても、個体差がどうしてもあるため、ある程度の量をこなしていないと信頼度は上がりません。
これらの科学的手順を踏んだ基礎実験のデータは、臨床研究に使うために非常に重要ではありますが、基礎研究のデータがそのままヒトに適応できるわけではありません。

3. 臨床応用
細胞レベル、動物実験などで、ある程度の信頼度のある効果などが期待できれば、臨床応用されることになります。
薬として開発するのであれば、膨大なステップが待ちかまえています。
そうでなくても、ある程度の条件は求められます。
臨床応用には、症例研究、臨床試験、疫学的研究などがあります。
基礎研究の成果から、実際に臨床の場で応用し、その結果が症例報告として発表されます。この症例報告が、客観的に観察した結果であったとしても、この手の体験談だけで実証されたと見なされるわけではなく、情報源として、それほど科学的な信頼度は高くありません。
これらの情報は単発で行われるため、臨床調査によって、情報が収集されます。
一番大切なのは、臨床試験の方法です。ある物質が本当にある現象に効果があるかを見るためには、プラセボ効果を排除するために二重盲検試験をとることが多い。

テレビのバラエティ番組で「実験」と称して行われるものと比べるとわかりやすい。
ある物質、例えば納豆なら納豆の成分のダイエットに対する効果をみたい場合、テレビ実験では被験者に一週間などある一定期間食べさせ、体重の変化を追いかけます。体内のある化合物のレベルとの相関関係を見たいときには、その検査値を比べることになります。
このテレビ実験の欠点はいくつかあります。

被験者数が少ない
多くの場合、被験者はひとりまたは数人で行われます。これではデータは揃いません。
誤差表示のない数値はデータではない。データの誤差を表示せず、個々の(少ない)実測値のみで結論を出すのがテレビ実験の特徴です。先のNHKと週刊誌とのケンカも、これに該当します。

対照実験がない、あるいは反証実験がない
ある物質や行動の効果を見たいのであれば、その物質を使わない、その行動をとらないといった対照実験が必ず必要になります。テレビ実験では、対照実験も反証実験もほとんどしません。
対照実験を行うときもまれにありますが、その場合、効果を見る人がひとり、対照の人がひとりといった、極端に被験者数が少なくなる傾向があります(納豆ダイエット捏造事件など)。
また、仮説を前向きに検証するだけでなく、仮説が間違っていることを前提とした実験も必要です。

被験者が実験目的を知っている
例えばダイエット効果を見ているのであれば、被験者はこれを食べれば、あるいはこの行動をとればダイエット効果が期待されていということを知っていると、目的の物質や行動以外の要素により、目的を達成しようと努力することが考えられます。

二重盲検試験になっていない
このような効果を排除するためには、本人がどのような試験の対象になっているのか知らずに試験する必要があります。また、試験を実行し、判定する側の人も、被験者が試験グループなのか対照のグループなのか知らずに観察する必要があります。さらに、被験者も無作為に選ぶ必要があります。
これらの条件は、一般に二重盲検試験と呼ばれており、本人の知らず知らずの行動や、観察者の思いこみなどを排除するためです。

実験時に観察しない
観察の仕方も大切です。被験者をある程度監視しておかないと、放置したままでは正しいデータが得られません。テレビ実験では、一般にスタッフが被験者に会うのは開始時と終了時だけといわれています。

統計処理をしない
適切な実験系で出てきた適切なデーは、必ず有意差検定などの統計処理をしする必要があります。実験者の主観で、効果があるとか無いとか言うのではなく、統計学的に処理をして、客観的な判断をする必要があります。

そもそもこんな実験はしない
実験計の組立がおかしい。納豆の効果を見たいので納豆を毎日食べさせるとか、ある食材の効果を見たいのでその食材だけ食べさ続ける、といった雑な実験は、そもそも計画すらされません。


これらの方法論は、血液型性格判断にも適応できます。これまでにテレビが行ってきた「実験」と上記の方法論を照らし合わせて考えてみれば、テレビ実験のいい加減さが簡単に見抜けると思います。
たとえば、血液型性格判断が間違っているかも、といった前提で組まれた実験はしない。
母集団が少ない、あるいは偏っている。
アンケート調査の場合、アンケートに答える人が何の調査か知った上で答えている。
テレビ独自のものとして、演出(ヤラセ、捏造)により、都合のいいデータだけ抽出される。仮説に合わない結果が出れば隠す。

ちょっと古い話ですが、所沢で焼却炉由来のダイオキシンによる、周辺の野菜の汚染騒ぎがありました。
その時に出てきた汚染データは、極端に少ないデータで、もちろん誤差の表示もなく、一番数値の高いものだけが意図的に取りあげられました。
その結果、パニックになり、直後にいわゆる「ダイオキシン法」が国会を通りました。この悪法はいまだに有効で、多くの人はゴミ由来のダイオキシンが有害だと誤解をし、そのために不必要な努力を強いられ、なおかつゴミ処理のために大量に石油を余分に消費するという、非常にバカげたことがまかり通っています。
そもそも最初のきっかけが間違っていたことは裁判でも確定しており、ゴミ由来のダイオキシン汚染の実態がないこと、この程度で健康被害が起こることはないことなど、多くの科学的知見が得られていても、なぜか、最初のずさんなデータだけが信じられています。

このデータは、もちろん、本人がそういっているだけレベルのデータで、実験系の組立もおかしく、統計処理も何もないものでした。論文になったわけでもありません。

遺伝子組換え技術有害説の根拠となっている初期のデータも全く同じ経路をたどっています。本人がそういっているだけのテレビ発表データがいまだに信じられています。
昨年騒ぎになった遺伝子組換え作物が子孫に影響を与えるというデータも、本人がそう言っているだけデータで、実験系の組立ががおかしく、適切な対照実験が行われておらず、別の因子の効果を見ているに過ぎないデータであっても、マスコミは大きく取りあげ、騒ぎになりました。

以上見てきたように、どんな情報源なのか確認するだけでも、ニセ科学に騙されることを防ぐことができます。多くの情報番組はほとんど信頼できないことや、社会面で報道される科学記事などの信頼度はかなり低いことなどがわかると思います。

一般に、新聞に載れば、スゴイ発見なんだと思ってしまいますが、その情報源をしっかり見極めれば、信頼できるものなのか、まだまだ基礎研究の始まったばかりなのか、はたまた、本人がそういっているだけなのか、ある程度判断できます。

もちろん、本人がそういっているだけだから、その情報は全面的に信頼できない、などといっているわけではありません。どんな研究成果も、この過程を踏むわけですから、将来大化けすることもあり得ます。
しかし、その時点で過度に効果を期待するようなことは慎まなければならない、ということです。
マスコミは、いわゆるマスコミ受けする情報であれば、本人がそういっているだけレベルの情報であっても、大きく報道します。
このような報道に踊らされないように注意する必要があります。

毛色がちょっと違いますが、前期旧石器時代の石器の発掘捏造事件もよく似ています。
報告書がなく、もちろん論文もなく、発掘された石器は他グループには見せず、結局本人たちのグループだけが、そういっているレベルの新聞発表のみの話でした。
したがって、第三者が発掘された石器や発掘記録を検証することはありませんでした。
この事件には権威ある人が絡んでいましたので、それだけで信頼され教科書にまで載ってしまいました。

もちろん、論文になりさえすれば信頼できると言うほど単純でもありません。
韓国で起こったES細胞の捏造事件、日本の東大、京大、阪大などで生命科学分野で起こった捏造事件は、いずれも一流雑誌に掲載された論文がターゲットでした。
論文は性善説に立っていますので、データそのものの捏造に関しては審査で見抜けないこともあります。


健康情報の場合、本人やその家族に被害が及ぶ程度(当事者にとっては深刻でしょうが)ですみますが、ダイオキシン騒ぎなどは国家レベルで大被害を生じ、いろんなムダを強いられてしまいます。
しかも、いつ終わるかわからないという大被害で、発表する側もそれを受ける側も大きな教訓を残しました。
この教訓を生かす意味でも、また、小さいことですが、ニセ科学に引っかからないようにするためにも、データの意味を理解するという科学教育は非常に重要だと思います。

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