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zoom RSS 進化論とキリンの首

<<   作成日時 : 2007/03/09 01:10   >>

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 進化のしくみを説明する進化論は19世紀に相次いで発表されました。
その中で、フランスのラマルクによる「用不用説」とイギリスのダーウィンによる「自然選択説」が対比する形でよく取りあげられます。
 ラマルクは1809年「動物哲学」をダーウィンは1859年に「種の起原」を著しています。
(余談ですが、岩波文庫や岩波新書は「起原」、他社は「起源」を使う傾向がああります。
したがって、書籍検索をするときなど、注意が必要です)

ラマルクの説では獲得性質が遺伝するとし、ダーウィンの説では適者生存による自然選択説として説明されます。
それぞれの詳細は教科書に譲るとして、ここでは高等学校の教科書などによく書かれている伝説「キリンの首」について取りあげます。

 両者の違いを説明するとき、またラマルクは間違っていたがダーウィンは正しいという説明をするとき、「キリンの首」を題材にして説明されることが多くあります。
実際、副読本にしている第一学習社の「図説」にも書かれていますし、他社の「図説」(たとえば東京書籍の「ダイナミックワイド図説生物」、数研出版の「視覚でとらえるフォトサイエンス生物図録」など)でも同様の記述が見られます。
ちなみに、第一学習社の教科書「高等学校生物U」(新課程用2004年)の本文にはキリンの首は記載されていません。
いずれの図説も用不用説と自然選択説を簡単に要約し、絵入りでキリンの首を使ってふたつの説の対立点を説明しています。

 図説によれば、少し逃げが見られますが、一見すると、ラマルクもダーウィンもキリンの首を使って自説を主張したようにも見えますし、現在の進化論でもキリンの首を題材に使うことで進化論を語ることができると読み取れるようになっています。
 他社の教科書では(以下、参照したすべての教科書は平成14年検定、平成17年度用)、たとえば「理科基礎」で、実教出版、東京書籍、大日本図書、数研出版の各教科書にキリンの首を使ってラマルクとダーウィンの説が説明してあります。

 しかし、ダーウィンは「種の起原 初版」でキリンの首にまったく触れていなませんし、ラマルクもキリンの首にかんする記述はわずか1段落だけに留まっています。

(大日本図書版では、キリンの首はラマルクの考え方の「用不用説」の説明と自然選択説の説明として使われています。キリンの首はダーウィンの考え方としては説明してありません。うまく逃げています)

参考文献
 ダーウィン著、八杉竜一訳「種の起原 上中下」(岩波文庫・1963年、1968年、1971年、所有本はいずれも1984年)
 ラマルク著、小泉丹、山田吉彦訳「動物哲学」(岩波文庫・1954年、所有本は1983年第4刷)
 ラウファー著、福屋正修訳「キリン伝来考」(ハヤカワ文庫・2005年、初版)

 ラマルクはおそらくキリンを見たことがなかったのでしょう。
キリンの前肢が後肢より長いなどといった記述が見られ、当時は動物園などなかったことから、おそらく文献からの知識のみで書かれたものと思われます。
キリンがそれほどポピュラな生き物ではなかったこともあって、ラマルクが自説の説明にあまりキリンを使わなかったこともうなずけます。
「キリン伝来考」に当時のヨーロッパ人が描いた図がたくさん載っていて、楽しめます。ラマルクがみたと思われる、ラマルクが描写しているとおりのキリンの図も載っています。

 一方、ダーウィンはちょっと事情が複雑です。
「種の起原」の初版ではキリンの首にまったく触れていませんが、最後の改訂版に加えた1章のかなにキリンの首の記述が見られます。
岩波文庫の上中下三冊版の「種の起原」では(中)の「付録」章である「自然選択説にむけられた種々の異論」という章がそれに該当します。
「種の起原」に異を唱えているマイヴァート氏の反論の節にキリンが登場する(先の本 p238以降)(現在の岩波文庫版は上下二冊です。該当個所は探していませんが、目次から下巻の最後にあるようです)。

ここでの記述も「図説」などに見られる説明とはかなり異なります。
なんと、自然選択説を説明する項目ではなく、むしろラマルクの「用不用説」との融合した説の例としてキリンの首が取りあげられています。

 実は、ダーウィンはラマルク説を完全否定していません。
ダーウィンはある意味ではラマルク主義者でもあります。
つまり、教科書や多くの入門書などにみられるキリンの首にかんする記述は、原著者のラマルクもダーウィンも取りあげていないことから、いつ伝説になったのかわかりませんが、創作であることは確かです。
さらに両者の対立も創作です。

 現在の進化論でもキリンの首をうまく説明することができない事情も考えあわせると、ダーウィンとラマルクの説をキリンの首を題材にして説明することは、捏造までとは言わないが、かなり危険な考えであることは確かです。
ダーウィンは正しいがラマルクは間違っていた、といった単純な話ではありません。
最近の遺伝学、生物学でも、獲得形質の遺伝と思われる現象が数多く発見されており、ダーウィンとラマルク間の対立はそれほど鮮明ではありません。

 高校の教科書では、数研出版の「理科基礎」にだけ「ラマルク自身は獲得形質の遺伝を進化の主な原因として考えていなかった」と説明している以外、ラマルクとダーウィンを対立させて説明しています。
 そんな数研出版ですが、章末問題として、ちょっと変わった問題を載せています。

ダーウィンの自然選択の説明として
「キリンの祖先では、木の葉に届く個体が生存に有利であった。そのため、高いところの葉に届く首の長い個体が(  )に打ち勝ち、子孫を残した。このような(  )が代々積み重ねられ、現在のように首の長いキリンに進化した。」
(  )の中に入れる語はわかりますか?
私には(  )に埋める語が浮かんできません。文章全体も疑問だらけです。

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
課題でキリンの進化論について調べているで、
とても参考になりました!!
ありがとうございます
名無し
2008/12/29 19:48

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