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zoom RSS ○進化的適応と進化医学(ダーウィン医学・進化心理学)

<<   作成日時 : 2006/07/01 21:40   >>

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[SI新書]やさしいバイオテクノロジー 血液型や遺伝子組換え食品の真実を知るにもよく似た内容の記述があります。読んでみてください。
医学の分野でも進化の考えを応用するのは有意義なことである。
多くの病気がなぜ起こるのか、なぜあるのか、進化医学的立場から考えると理解しやすい。
<ヒトにおける植物毒素に対する進化医学>
生物は外敵に対抗する防御手段としてさまざまな方法を進化の過程で獲得している。
植物もその例外ではない。植物は根をはることから動き回ることができないという制約がある。したがって、動物など動くことができる生物とは異なる独自の防御手段を発達させている。そのうちのひとつが化学物質による生体防御反応である。
植物は葉や茎など、あるいは塊茎や鱗茎などに自ら毒素を作り、あるいは共生する細菌に毒素を作ってもらうなどして、捕食者から身を守っている。
これらの毒素は生態系の中で捕食者に対する毒素であるばかりでなく、ヒトにとっても有害である場合が多い。

ヒトの学習する能力を持っている。その結果、毒性の少ない植物を選別することに学び、比較的害の少ない作物を育てることに成功した。
しかし、人体にまったく無害の野菜というのは作れていない。
つまり、ヒトにとって、野菜などの作物の有害性の強弱が問題になる。
そこで、多くの適応的進化が見られる。

ここでは2点取りあげる。
妊婦の「つわり」と子どもに見られる食べ物の「好き嫌い」である。

毒素の働きに対して少し確認をしておく。
ヒトに対する有害化学物質の毒性は、いつでもだれでも同じというわけではない。
有害物質の効果が強く働くのは細胞分裂速度が速い時である。
たとえば、胎児や成長期の子どもなどは細胞分裂が活発であり、毒素に対する感受性も高い。
したがって、そのような時期に特有の防御機構が適応により獲得し発達している。

その適応している例が「つわり」や「好き嫌い」である。

その説明は後にするとして、適応がない場合、つまり、ある物質に対してまだ経験が浅く、進化的適応が見られないような毒素に対してはまったく無防備である。
そのいい例がタバコである。
人類にとって喫煙はまだ新しい経験であり、適応的でない。
したがって、細胞分裂の活発な時期ほどタバコの影響を受けやすいことになる。
妊婦の喫煙や間接喫煙は胎児の成長に多大な悪影響を与えることが確認されているし、未成年者の喫煙を法により禁止しているのもこの理由からである。
また、適応を獲得していないため、両者とも適切な教育と適切な法による規制が必要になる。

このように、適応的でない場合は、よい教育や法による規制が必要になるが、適応的である場合はその反応を利用し活用するのがよい。
では、どのような適応が見られるのであろうか。

胎児は激しい細胞分裂をくり返している。
胎児は母体の子宮により保護されているが、母体経由の毒素の影響は受けやすい。
胎児による最大の防御機構は母体に「つわり」を起こさせることである。
つまり、吐き気と食欲不振を起こさせ食べ物に好き嫌いをはっきりさせることにより、結果的に毒素の摂取を減らすように適応している。
つわりのひどい時期と胎児の大切な分化の時期とはよく一致している。
つわりの弱い妊婦やつわりの防止薬を服用した場合の方がそうでない場合に比べて奇形児の生まれる確率が高いことからもこの考えが証明される。
つわりを押さえる薬による多くの薬害が報告されているが、直接その薬が胎児に悪影響を与える場合もあるかもしれないが、つわりをなくしたことにより母体の食生活による毒物の摂取が多くなることから奇形児に結びつくこともあり得る。

この場合の毒素とは、残留農薬や食品添加物のことではない。

通常一般人が食べている食品(主に植物)由来の毒素のことである。
激しいつわりは適応なのだから我慢しろと言うのは簡単だが、当の妊婦にとっては大変につらい出来事である。
つわり防止の薬物をうまくコントロールしながら利用する適切かもしれない。

子どもに見られる「好き嫌い」も進化的適応で説明できる。

子どもが嫌いな食物は一般的に臭いがきつかったり刺激が強かったりする。
その原因となる化合物は一般的に毒素である。このような毒素に対して一般的に子どもの方が敏感に反応する。つまり、子どもには、危険なものであると認識するという適応が発達している。
植物由来の食品に含まれるグリコシドやイソチオシアネートなどの毒素は刺激臭や辛みなどの刺激がある。
その毒素を含む食物を特に好き嫌いするという行動は正しく適応的である。
この適応は非常に有用である。
教育的配慮から子どもの好き嫌いをなくすような努力も必要であるが、生物学的に進化的適応も考慮する必要がある。
子どもに対して無理に刺激の強い野菜類を多量に与えることは、せっかく獲得した進化的適応に逆らうことになる。
大人になれば細胞分裂速度が遅くなり、毒素による影響も薄くなる。
適応的である場合はより活用すればいいが、誤った教育により逆に悪い影響を与えることもある。
大人の中には生野菜が健康にいいとの思いこみ、ほとんど信仰の域に達している場合もある。
そのような信仰を持つヒトにとっては、子どもの好き嫌いは悪であり、子どもに強制的に嫌いなものを食べさせるのは善であると思いこんでいる。
しかし、実際にはその手の強制はあきらかに間違っている。
多様な食物を摂るという行動は多種類の毒素を摂るということにつながる。
これは悪いことではなく、毒素に対抗する多くの防御システムを活性化するのに役立っている。
一方、かたよった食事をしている場合、毒素の種類も限定され、その対抗システムも発達しない。
したがって、新規の毒素に対応しきれなくなくなる。

このような観点から見れば、多様な植物由来の毒素を摂ることも重要である。
結局、「食の安全」とは量と種類のかねあいが大切であることが分かる。
子どもに見られる食物の好き嫌いは、毒素を避けるという点では適応的行動である。
大人になってから好き嫌いが少なくなるのも、その適応の必要性が薄れるからでもある。
好き嫌いを悪と見て無理やり食べさせるのはその適応から見るとよくない。結果的に毒物を避けなければいけない時期に、せっかく適応により避ける行動を取っているにもかかわらず、強制的に食べさせるということは結果的に毒物にさらされることにつながってしまう。
一方、多種類の食物を摂ることも重要で、毒素に対抗するシステムを活性化させるためにも偏食はよくない。
やさしいバイオテクノロジー 血液型や遺伝子組換え食品の真実を知る (サイエンス・アイ新書)

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